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僕の部屋になる大広間には、ふとんがすでに敷かれていた。それは僕が予想していたとうり、部屋のど真ん中に悠々と置かれていて、コッケイに思えた僕は苦笑してしまった。 寝る前に今日1日の疲れを取るために、お風呂に入ることにした。風呂はお世辞にも広いとは言えず、大人五人くらい入れる湯船だった。部屋数から考えたら、このくらいでいいのかもしれないが、僕はもう少し広い湯船で、ひとりで泳いで見たかった。よく旅番組の温泉シーンで「入浴時には湯船にタオルを入れないでください」と注意書きが出るけど、どうして入れてはいけないのだろうか。訳も分らず僕はそのルールに従い、頭にタオルをのせていて、少し熱めの湯船に浸かった。 小さい頃の記憶で、オヤジとお風呂に入った事を思い出した。おやじがお風呂の中にタオルを沈め、それに空気を入れて湯船に出し『タコさん』とか、そのまま沈めてぶくぶくと空気が上昇して来て『オナラだぞ』とか言って、僕を笑わせてくれた。風呂場の中に僕一人しかいないので、昔を思い出しオヤジのまねをしてみた。くだらない事だと思えたが、やっている自分が何故だかおかしく思えた。今の僕は凄く気分が良かった。「時刻表の地図を 指でなぞっていくと こころのアルバムに・・・・心のアルバムか」 僕も思わず口ずさみ歌っていた。しかもお風呂の中で反響して、自分で歌がうまいと感じていた。この最初のフレーズが、いつの間にか僕の心の中に染み付いていたようだ。 ゆであがった体で大広間に戻り、一つポツンとあるふとんを見ると何か寂しくは思えるが、違った意味で殿様気分にもなる。今までこんな広い部屋で一人で寝た事もないし、これから先にも無いと思う。僕はふとんに大の字になり天井を見ていた。修学旅行や家族旅行でこんな旅館に泊まった事は有ったけれど、一人っきりでましてこんなに広い所は今まで無かった。ホームシックではないけれど、自分の部屋が懐かしく感じていた。手の届く所にテレビが有り、パソコンやお菓子や飲み物など、僕の下部達が身近にいた。しかし今は僕一人。あそこに見えるカラオケは、デカイ態度で変な奴が来たかの様にこちらを見ているし、あの掛け軸は自分がここの主であるような素振りで、真ん中に陣取っていた。どうも僕は居心地が悪く、ふとんをズルズル引っ張って部屋の隅に移動した。ここならカラオケ様の視線も感じないし、掛け軸様の視界から外れる。 この部屋の落ち着ける場所を見つけた僕は、疲れと安心感でいつの間にか寝てしまった。 おしらせ ![]() 時刻表に地図をなぞっていくと〜 で始まる「遠野物語」の曲が入った あんべ光俊/イーハトーヴタイム このアルバムは、ページの左上の画像から購入できます 次回 第24話につづく・・・ |
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