遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第35話  南部鉄の音色

<<   作成日時 : 2007/12/05 19:06   >>

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 太陽が一番高いところにあり、遠野盆地は風もなく、汗もすぐに蒸発しまった。
「暑いね・・・そうだ こういう時はかき氷食べたくならない?」
「かき氷・・・」
今日 朝から暑い中を走りまわっていたので、どこか涼しい場所で冷たい物が食べたいと思っていた。
「そうだな、のんびり冷たい物でも食べて、これからどうするか考えよう」
「よし決まり、急ごう」
サチは満面の笑顔で後ろから自転車をおした。
「おい 危ないからおすな!」
東北の見知らぬ小さい町にいる事に、なんだか違和感がなくなっていた二人だった。 
 自転車を何も問題なく返し終わり、すぐそばにある喫茶店に飛び込んだ。薄暗い店内に入ると心地よい涼しさが、僕らを向かえてくれた。小さな店にはテーブルが少なく、隅の席に座った。壁にかかっているメニュ−を見て、僕は宇治金時 サチは練乳を注文した。そのまま店をグルリと見回すと、エアコンが無いことに気がついた。
「あれ エアコンないね?」
その僕の言葉に、サチも360度店の中を見ていた。不思議に思ってみている僕らを、時々 風鈴の音色が静かな店内に涼しげに響いている。黒光りした鉄で出来ているその風鈴は、僕の家に有るガラス風鈴より、キーが低いが響き終わるのが長かった。
 のれんの奥から削りたての氷が、ガラス器に山盛りになって出てきた。どちらかと言うと、僕が頼んだ宇治金時の方が贅沢に思えた。とがったかき氷を、スプーンでザックリすくい、口の中に放り込んだ。
「あー冷た〜い」
二人同時に発した言葉で、お互い目が合った。荒削りの氷が口で解ける寸前に刺さる感じがたまらない。暑いせいなのか、それとも綺麗な水で作った氷が美味いのか、久ぶりに食べたかき氷は格別の味だった。
「ところで『遠野物語』のこと分ったのか」
僕は冷たくなった口の中を、コップの水で少し暖めなおし、今回の旅の目的に触れてみた。
サチは氷を食べて頭がキーンとなり、それどころではない様子だった。涙目になった彼女だったが、どうにか落ち着き顔を左右に振りながら答えてくれた。
「うんまったく・・それに誰に聞けばいいのか分からないし」
「仕方ない、片端から聞くしかないな」
その僕の言葉に、彼女はキョトンとした顔でこっちを見ていた。僕がやる気を出したことが、不思議に感じた様子だった。
「どうしたの?そんなにやる気出して?あまりに冷た過ぎて頭の中壊れた」
「おいおい俺だってやる時はやるさ」
溶け始めたかき氷をせっせと口に運び、個体から液体になるスピードと格闘していた。最後はガラス器の中身をいっきに飲み干し、僕の至福の時が終えた。
 まだ食べ終えていないサチには、僕の今の気持ちは言わなかった。彼女とは長い付き合いだから言えることだが、このまま何も手がかりが無いと、僕に気を使って旅が終わらせてしまう可能性がある。僕はただそれを察して先手をうっただけだった。

                         

    
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            次回 第36話につづく・・・



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