遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第36話  何かが変わる瞬間

<<   作成日時 : 2007/12/08 12:48   >>

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 コップの水を飲み干した僕は、即行動と思い店員のおばさんを呼んだ。
「すみませ〜ん」
「あの?お尋ねしたい事が有るんですが・・・」
おばさんは僕をチラッと見ながら、何を聞かれるのか少し不安そうな笑顔をしていた。
「え〜何でしょうか」
「あの−『遠野物語』って知っていますか」
「あ−多分、この地に伝わる昔話のことでしょう」
おばさんは自信を持って笑顔で答えてくれたけど、やはり予想していた答えだった。
「やっぱりそうですか、ありがとうございます」
僕とおばさんの会話を聴いていたサチは、やっと冷たいかき氷をやっと食べ終えた。
「ほら無理でしょ、私たちが期待している言葉は返ってこないよ」
「それなら他の所で聞いてみようよ」
サチは氷が解けてあふれそうなコップの水を、ゆっくり飲んで僕をじっと見て言った。
「他で聞いてもきっと同じ答えしか返ってこないよ・・ここは民話にふるさとだからね、それに私たちが望んでいる答えは30年くらい昔に事だし、多分 限られた人しか知らないと思う・・・だから無理」
「それじゃあきらめるのか」
僕はサチを怖い顔で睨んでいた。すると彼女は下を向いてしまった。その瞬間マズイと思い、強張った顔の力を抜き、彼女がこっちを見たらすぐに謝ろうと思っていた。
 彼女は手提げバックから、カセットテープを取り出した。
「このカセットテープだけでは何の手がかりになる訳無いよね、市販のテープにただ録音しただけのものだし・・・」
「いつも持って歩いていたのか」
「そう 誰か知っている人がいたら、聴いてもらおうと思ってね」
サチは真剣に突き止めようとしている事を、その時はじめて感じた。自分の父親の事なのに、僕は彼女に対して何か申し訳なく思えてきた。
「かしてごらん」
僕は受け取ったカセットテープを、上下左右にまわして見た。そしてケースを開け中からテープ本体を取り出した。正直、あの時から今までこんなにマジマジ見たのは初めてだった。そのカセットテープのプラスチックの部分は傷だらけで、中のテープ自体も少し波うっていて、いかにも保管状態が良くないことがわかる。
「あーぁこれでは音なんか聴けないよな、カビがはえないのが不思議だよ」
カセットテープの入れるプラスチックケースも傷だらけで、少しヒビが入っていた。サチがケースを手に取り、中に入っていたインデックスを取り出してみていた。表面には油性ペンらしきもので書かれた『遠野物語』の文字が、消えかかってかすかに見えていた。そして裏面を開いていた彼女の手が止まり、目を細めて何かを見ていた。
「どうしたの」
僕は一点を凝視を見ていた彼女に聞いた。
「『遠野物語 by 飛行船』と書いてある、ほら見て」
彼女が差し出したインデックスシートには、同じ油性ペンで書かれたと思われる、同じ色の字が書かれていた。それは表面の消えかかった字とは違い、裏側になっていた為に日にさらされる事無く、インクが飛ばずはっきりと読めた。そのインデックスシートを手に取り、じっくり見ていた僕は疑問に思ったことがあった。サチはそんな僕の表情が気になったようだ。
「ねぇどうしたの」
「うん、この字・・・おやじの字ではない?」
それを聞いたサチが、一瞬目を見開いて僕の顔を見た。
 それを見た時に、二人の気持ちの中の何かが、動かされたような気がした。

                         


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          次回 第37話につづく・・・





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