遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第38話  その一言で事は動いた

<<   作成日時 : 2007/12/15 01:42   >>

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 僕が口に出した一言を、サチは聞き逃さなかった。
「どうしたのタク」
こんな状況で、単なる思い付きで物事を言うと、また彼女の気分を損ねてしまう。そこで僕は軽く冗談っぽく言ってみた。
「喫茶店ならあるけどね」
彼女は怒ったような顔でこっちを見ていた。また喧嘩になると思い、すぐに軽はずみな言動を訂正した。
「ごめん、真剣な話をしている時に、またつまらない事言ってしまって」
「なにそれ」
顔色を変えない彼女を見て、どうこの場を繕えばいいのか、頭をめぐらしていた。『旅の恥はかきすて』ということわざがあるけれど、知らない町とはいえ喫茶店の中で喧嘩はまずいと思った。
「いや、だからさっき言った事は誤るよ」
手を合わせて小さく頭を下げた。
「そうではなくて、喫茶店ってなに」
彼女は何を聞きだそうとしているのか僕には理解できず、ただ彼女のご機嫌をとる為に質問に即答した。
「喫茶 飛行船という店があった」
「何処に」
「自転車屋の近く」
「自転車屋って・・何を言っているのタク」
彼女に攻め立てられている事もあり、僕は壁際に押し付けられている気分がした。深呼吸して冷静にもう一度、今日の出来事を説明した。
「つまり自転車に乗っている途中に、タイヤがパンクして修理してもらった訳、そしてその自転車屋の並びに喫茶店があって、そこの店の名前が飛行船ということ・・わかった?」
サチは納得したのかしないのか、少し何かを考えていた。僕は次にサチが何を言い出すのか、ハラハラドキドキして彼女の様子を伺っていた。
 少し間が空いて彼女が顔を上げ、僕の目を見て真剣な眼差しで言った。
「よし、その喫茶店に行ってみよう」
サチの言葉に驚いたことも当然だが、それと同時にあの喫茶店のマスターの無愛想な顔を思い出してしまった。僕はとっさに彼女に行った。
「いや、やめよう」
意気揚々と立ち上がろうとしていたサチは、腰が砕けたように腰を下ろした。
「え、どうして、何か手がかりが有るかも知れないよ」
「あそこのマスターは少し変わり者らしいから、いくのはやめたほうがいいよ」
「そんなの行って見ないとわからないでしょ」
「結構、顔怖いし、無愛想だし、周りの評判も良くないようだし・・・」
どうにか引きとめようと言葉を並べてみたが、彼女の気持ちはすでに喫茶店に向いているようで、僕の困っている顔など目に入らないようだった。いつでも店を出られる体制で、足が椅子の外に飛び出していた。
「さあ行くよ」
気が進まない僕は、彼女を引きとめる事が出来ず、どうしたらいいのか困っていた。
 僕の様子など気にする事無く、伝票を持ってレジに向かう彼女の後ろ姿を見て、僕はシブシブ席を立って、飼い犬の様に彼女の後ろについていった。

                             


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              次回 第39話につづく・・・


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