遠野物語 21 -若葉の季節-

アクセスカウンタ

zoom RSS 第40話  ためらい

<<   作成日時 : 2007/12/22 01:39   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

         

 人の数だけいろんな人がいて当たり前と、自分の気持ちに言い聞かせた。僕は今まで嫌な事は、出来る限り避けて来た。それは自分の為にならないからだ。それなのに果たし合いの血統にいくような憂鬱な気持ちになり、あえてそれに立ち向かわないといけないのか、僕自身の意に反していた。そうな感じだからペダルをこぐ足が重く、サチの自転車との間隔が広がって行った。
「ねえ何疲れているの、早く行くよ」
まだ疲れている方が言い訳になるけど、こんな気持ちを彼女に伝える事は難しいだろう。でもそのマスターを見れば、彼女だって同じ思いを抱くに違いない。
 憂鬱な気持ちで、彼女の自転車の後ろをついて行った。すると見慣れた自転車屋の横を、通り過ぎた事に気がついた。
「ごめんサチ、通りすぎた」
僕は大声で彼女を呼び止めた。案の定 キ〜 と音をたてて止まった。彼女は自転車を降り、手でおして戻って来た。
「あそこの喫茶店、普通の店じゃない」
確かに何も飾り気の無い、何処にでもある喫茶店だ。僕たちは店先に自転車を止め、二人でその喫茶店の前に立ち、店の外観を眺めていた。
「看板の文字が薄くなっているけど、確かに‘喫茶 飛行船’と書いてあるね」
店のドアは開いていないが、営業中の札は出ていた。
「ここ喫茶店だよね、表にメニューの案内くらい出していて欲しいね」
確かにサチが言う様に、僕らが住んでいる都会のカフェには、入り口にメニューがあり、それを見て自分の好みがあれば、その店に入るようになっている。もしくは‘今日のお勧め’とあり、常に何かを売りにしている。それに比べてこの店は、やる気あるのか無いのか疑ってしまう。確かにあのマスターでは、お客も寄り付かないと思った。
お店の前に僕たちお客がいても、ここのマスターは気がついている様子も無く、店はひっそりと静かだった。
「よし入ってみようか」
とサチが言ったけれど、僕は一瞬ためらいを見せた。
「やっぱりやめておこうよ」
半身乗り出したサチの体の左腕を、僕は条件反射のごとく掴んでしまった。彼女は驚いた顔で、半歩乗り出した足を戻していた。
「え、どうしたの?せっかく来たから、入ってみようよ」
その言葉を聞いて 似た表現をするとしたら、楽しいはずの遊園地に来て、苦手なお化け屋敷に連れ込まれる思いと同じ心境だった。
「俺は気が進まない」
とサチの目を見てはっきり言った。そして僕がサチの腕を掴んでいた手を、ゆっくりと放した。
「ここまで来てどうしたの?」
理由を考えて見たけれど、これといって納得させられる言葉は無かった。
「ただなんとなく・・・」
ただそう言うしかなかった。すると彼女は何も言わず、僕の手をそっとつかみ、気が進まない僕を軽く引いた。
「ほら行くよ」
彼女のもう一方の手は、すでに店のドアのトッテに触れていた。そして僕を引き寄せた。


           遠野物語 21  心のアルバム

    高清水方面



                おしらせ 
 
            次回 第41話につづく・・・







  

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
第40話  ためらい 遠野物語 21 -若葉の季節-/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる