遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第41話  喫茶 飛行船の中へ

<<   作成日時 : 2007/12/26 19:48   >>

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 カラ〜ンとドアのベルが鳴り、店のドアが開いてしまった。
「おいおい」
僕は不本意ながら、店の中に入ってしまった。店の中は、薄暗く静かだった。決して広いとは言えない店の奥にカウンターが有り、そこで新聞を見ている男性がいた。その姿が目に入った途端、僕は固まってしまった。
「こんにちは」
そんな僕の状況を知らないサチは、その男性に向かって笑顔で挨拶をした。最初から僕たちがいた事を気づいていたに違いないのに、そのマスターは驚いた様子ではじめて顔を上げ、こちらの存在に気づいた素振りをした。無愛想なそのマスターに、僕は緊張よりむしろ嫌な感じを抱いてしまった。
「いらっしゃ〜い」
けだるそうな言い方で、僕らをお客として向かえてくれた。
 他にお客がいない店内で、何処に座ればいいか迷いながら、この店の唯一明るい窓際のテーブル席を見つけた。僕は何とか落ち着きを取り戻し、この飾り気の無い時代遅れの喫茶店内を見渡した。少し古びた内装でテーブル席が二席、それにカウンターに4脚の椅子がある狭い喫茶店だった。しばらくして嫌な気配を漂わせながら、水とメニューを運んで来る、マスターの姿が目に入った。そして僕らのそばに近寄り、持って来た物をテーブルに置いた。その手は凄くごつくて、不器用そうな感じがした。
「ご注文は・・・・」
顔の表情を二コリともせず、彼は淡々と仕事をこなしていた。それにまだメニューを開いていないのに、すぐに注文をとるのはいかがなものか、そのチョッとした事だけど、余計に嫌な感じを受けてしまった。前に座っているサチは、そんなマスターの態度になんら嫌な顔もせずに一言いった。
「もう少し考えさせてください」
「決まりましたら、およびください」
そう告げると、彼はカウンターに戻っていった。
 僕はただ窓の外を見ていた。人がほとんど通らない静かな道、これではこの喫茶店に来る客など、いないのは当たり前である。
「タクは何にする」
サチは色気の無い小さくて薄いメニューを、開いて僕に向けた。
「なんか感じ悪いよな」
サチの方に身を乗り出し、小声でささやいた。
「そうかな、別にそんな感じは受けなかったけど・・・で注文何にするの」
渡されたメニューに目を通すと、ウインナーコーヒーという文字に目が止まった。
「なぁ、ウインナーコーヒーってさ、ウインナーが付いて来るのかな」
僕は冗談でなく、真面目な顔で聞いた。今まで僕が行っていたカフェには無い品物で、想像が付かないコーヒーなのだ。
「俺はアイスコーヒーにする」
「あれ ウインナーコーヒー頼まないの、もしかしたらタコさんウインナーが付いて来るかもよ」
サチは笑いながら冗談を言った。多分彼女もウインナーコーヒーの意味を知らないと見えた。もし知っているなら、いつものように僕をバカにした言い方をするはずだ。
「すみません」
狭い喫茶店に響きわたったサチの声に、マスターがカウンターの奥からこちらに向かって来た。
「えーと、アイスコーヒーとアイスミルクティをお願いします」
「少々お待ちください」
何か上から見下ろした感じが、僕の嫌な感情に輪をかけた。
「あのマスターどう思う?」
彼女にマスターの印象を聞いて見たかった。
「どうって、普通のおじさんじゃない・・」
「あっそ!」
 僕が色眼鏡で見ている為か、それとも僕自身の性格の問題なのか、彼女の答えは納得出来なかった。


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              次回 第42話につづく・・・





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