遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第43話 嫌な雰囲気が漂う

<<   作成日時 : 2008/01/05 02:05   >>

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 カウンターの奥のマスターは、僕らの存在を気にかける事無く、ただ黙って新聞に目をやっていた。僕は飲み終えたサチに目をやり、一息おいてタイミングを見計らった。
「よし行こうか」
僕は彼女に有無も言わせず席を立つ、少し戸惑いながら彼女も席を立った。そしてお会計を済ませる為に、レジに向かった。
 僕らの行動に気づき、新聞をガサガサと4つ折りにしたマスターはレジに立った。
「一緒で700円になります」
そして千円札をマスターに渡し、お釣りを受け取ろうとした瞬間、僕の後ろからサチが思いがけない事を言った。
「あの・・・遠野物語知っていますか」
突然のその言葉に、マスターは驚きもせず言葉を返した。
「えぇ知っているけど、資料館に行けば詳しく教えてくれるよ」
マスターは優しい顔でサチに答えていた。
「はい300円のお釣り」
差し出した手のひらに、100円玉が3枚乗った。
「あ、ありがとうございます」
僕はお釣りをもらうことが精一杯だった。しかし彼女はそう言われても、まだあきらめなかった。
「それは知っています、私の知りたいのは昔話ではなく遠野物語という曲です」
それを聞いたマスターは、レジの引き出しをゆっくり閉じ、仕方なさそうに言った。
「遠野物語ね・・・」
マスターは少し苦笑しているように見えた。そしてゆっくりとカウンターに引っ込み、いつも腰を下ろしている椅子に座ってしまった。それを見てサチは僕の前に立ち進んだ。
「おい、もう帰ろう」
お金をもらった僕らには、もう用がないと割り切ったマスターの態度に、僕はこれ以上ここにいてはいけないと感じ、彼女の腕を引っ張った。それでもサチは僕の手を振りほどき、カウンターのマスターに詰め寄った。こうなると僕にはもう彼女を止める事は出来ない。
「20年以上前の曲で飛行船という方が唄っていたと思います」
サチはマスターの顔をジッと見て、僕などすでに視界に入っていない様子だった。小僧二人などまったく相手にしていない感じで、マスターは腰を掛けタバコにマッチで火をつけた。目を細めた顔をして深く吸い込み、火のついたタバコが赤く灯り、先端がいっきに灰になった。今にも何か一波乱起こりそうな、静かな雰囲気が漂っていた。こぼれそうな灰を灰皿に落とすと同時に、マスターはサチと僕を威嚇するような顔で見返し、そしてまたタバコをくわえた。そんな態度にも怯む事なくサチはジッと目を離さなかった。
 僕はそんな二人の様子を見ていて、そっとこの場から逃げ出したかった。冗談すら通じない雰囲気に、僕はどうしていいのか困っていた。やはりこのマスターに会った事を後悔した。


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            次回 第44話につづく・・・





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