遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第44話  攻める

<<   作成日時 : 2008/01/09 10:28   >>

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 しばしの沈黙が続き、短くなったタバコを灰皿に押し付けながら肩で一呼吸おき、やっとマスターが口を開いた。
「知ってはいるがそれを聞いてどうする、遠野物語の飛行船は過去のグループで、もう曲すら誰も知らないはずだが」
低い声で言ったマスターだったが、それ以上説明する事が面倒になったように僕には感じた。それでもサチは、もっと詳しく聞きこうとマスターに迫った。
「知っているなら教えてください」
「曲を聴きたいのなら、ラジオ番組にリクエストでもするといいよ」
僕たちを少しバカにした言い方で、あっさりと言い返されてしまった。それでもサチはあきらめなかった。
「その曲の事を知りたくて、東京から来たんです・・詳しく教えてけれませんか」
真剣な眼差しで訴えかけた。そんな彼女の迫力に、マスターは少し驚いていた。
「おいおい そんな事でわざわざこんな田舎まで来るのか?いまはインターネットで調べる事が出来るだろう?最近の若い奴らの考えることは俺には理解できないね」
僕もその言葉に同感だった。冷静に考えたら、それが正しいと誰もが言うに違いない。サチの心の奥底に秘めていたものは、マスターと僕とは何かが違っていたようだ。
「それが無駄だとしても、実際来て見ないと解決しな事もあるのではないですか」
彼女はまったく怯まなかった
「それじゃぁ、それの何が聞きたいんだ」
マスターは熱くなったサチの口調に対し、冷静に聞き返した。当たり前だが大人の彼は、多分僕らを相手にするのが面倒になったと思えた。サチは真剣な目をして率直に訊ねた。
「遠野物語という曲がどんな曲なのか教えてください」
マスターは少し困った様子で話し始めた。
「飛行船というフォークグループが、恋人の事を唄った曲だったかな・・・?昔のことだからはっきりと覚えていないけれど」
時刻表の地図を指でなぞって行くと、心のアルバムにしまっていた懐かしい駅に着く・・こんな始まりですね」
彼女が前に僕に聞かせてくれたフレーズを、マスターの前で口ずさんだ。そんな彼女の行動に、僕もマスターも呆気に取られた。
「確かそんな歌詞だったかな?でもそこまで知っているのなら、俺が教える必要ないだろ」
首をかしげながら、マスターはキッパリ言った。
 するとサチが自分のバックからカセットテープを取り出し、カウンターの上に静かに置いた。
「この古いカセットテープには、いま言った部分しか入っていないんです」
傷だらけのクリヤーケースのカセットテープに、マスターは目をやった。するとそれをジッと見つめ、手に取り懐かしそうに見ていた。
「随分と古い物持っているな、これどこかで拾ったの」
まるでゴミから拾って来たような言い振りだった。
「押入れの奥に有ったダンボールの中に入っていました」
「そうだよな、今ではこんな物 持っている奴いないよ」
そう言ったマスターは、カセットテープをカタッと音をたてて、少し雑にカウンターに置いた。
 遠目で眺めていると何気ない行動だけど、その扱いに方に納得のいかない人間がいた。そしてマスターの言った事で、後に彼女の気持ちを爆発させる事になる。


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            次回 第45話につづく・・・




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