遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第46話  予期せぬ展開

<<   作成日時 : 2008/01/16 20:02   >>

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 穏やかなマスターの表情を見ていたら、僕自身も心の力が抜けて、気持ちが楽になっていた。
するとインデックス用紙を見ていたマスターの手が、何かを見つけた様に止まっていた。
「遠野物語 by 飛行船って」
そこの書かれていた文字をじっと見つめ、顔を上げる事無くサチに訊いた。
「ええそれが気になってここに来ました」
とサチが答えた。マスターはその書かれた文字を見ながら黙ってしまった。
「あの・・・どうしました」
サチはそんな彼の態度が気になったのか、恐る恐る訪ねた。すると彼は、右手の手の平をこちらに向け、待ってくれという素振りした。僕らはどういう事か理解が出来ず、二人で彼の言葉を待った。
 少し沈黙続き、言葉を押し出すかの様に、マスターは声を細めて言った。
「さっき信頼している人と言ったが、それは誰のことだ」
彼の突然の問いに、声を震わせながらサチが答えた。
「タク、いや彼のお父さんですけど」
とサチが僕の方を振り返り、僕をマスターに改めて紹介した。すると彼は僕の方をじっと見た。その目は怖いと言うより、どこか遠い目をしていた。
「君のお父さんの名前は・・・」
「新田真(マコト)ですけど」
自分の父親の名前を他人に言うのが、何となく恥ずかしかった。それを聞いたマスターは驚いた顔を一瞬した。僕もその顔を見てドッキとした。
「そうか君のお父さんが、あの真か・・・」
その言い方は、いかにも俺のオヤジを知っているような口調だった。
「おやじのこと知っているんですか」
僕は動揺して声が震えていた。
「あー知っているというか、知っていたが正しいかも」
「でもそこに書いてある文字は、おじさんの字ではないですよね」
サチが聞いた。
「確かにこの字は真ではなく、俺の妹の字だ」
「エッ妹ですか・・・?」
僕とサチは驚いてしまい、二人同時に声を出してしまった。
「それで真は・・いやお父さんは元気なのか」
「実は つい最近亡くなりました」
僕が少し言いにくかった様子を、マスターは感じていた。
「そうなのか 悪いこと聞いたな」
マスターはやはり遠い目をしたままだった。
 静まりかえった店内には、いつの間にか共通の何かが、三人の間で生まれたように思えた。
「二人ともそこに座って待ってなさい」
言われるままに、僕らはカウンターの椅子に腰をかけた。そしてマスターはそう僕らに言い残し、奥に引っ込んでしまった。
「何か複雑な気分」
そう言ったサチは、あまり元気が無かった。
「どうして、あんなに知りたがっていたのに・・」
「うん、最初は気になって仕方無かったけど、現実にこうしておじさんの知り合いに会うと、私の描いていた事と違って来ているような気がする」
「サチが思い描いていた事って何?」
「なんて言ったらいいのか難しいけれど、こんな現実的ではなくて、遠い世界を思い描いていたかも?」
彼女が何を言おうとしているのか、僕には理解できなかった。
 本来、僕の気持ちの方が揺らぐのに、今のところ彼女ほど気持ちは乱れていなかった。


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              次回 第47話につづく・・・



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