遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第48話 昔話のはじまり

<<   作成日時 : 2008/01/23 11:12   >>

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 コポコポとフラスコの中のお湯が踊りだした。唯一こいつだけが、この無言の時を埋めてくれた。マスターには気にするなと言われても、こちらから積極的に訊く事ではないと思った。
 僕はとにかく何か話そうと思い、目の前にあるそいつを引き合いに出した。
「こんなふうにコーヒーを作るのなんて、生まれて初めて見ました」
「そうね 何か理科の実験を思い出すよね」
サチも僕の話に乗って来てくれたが、それも数秒の会話で終わった。
「それで二人は何の為にここまで来たんだ」
そんな僕らの心遣いを無視して、ひと仕事終えたマスターがもう一度同じ質問をした。
「先ほどもいいましたが、遠野物語の曲を知りたくて来ました」
彼女は失礼と思いつつ、仕方なくそう言った。
「それは聞いたけど、その曲の何を知りたいのか教えてくれないか」
マスターはタバコを一本取って、サイフォンのアルコールランプに近づけ、タバコに火をつけた。
「その曲がどんな内容か知りたいのもありますが、それより彼のお父さんが何故この一曲だけ録音されたテープを、今まで持っていたのかを知りたくて来ました」
「真がこのテープをずっと持っていたって」
カセットテープを見つめながら言ったマスターの言葉に、何か思い当たるふしがあるようにも聞こえた。
「それとギターを弾く時に使うピックが数枚有りました」
「そうか・・・」
マスターはタバコをくわえ、遠い眼差しで天井に立ち込める煙を眺めていた。そんな行動見て、何かを察知した彼女は思わず言った。
「何か知っていますよね」
マスターは少し考え 僕の目を見て言った。
「おまえ おやじの昔の事知りたいか」
「えーまあ」
とは言ったものの、正直マスターが言うほど関心は無かったが、ただ彼の僕を見る眼の鋭さに、そう答えてしまったのだ。この三人の中で一番さめていたのは僕だけと思う。
 タバコの灰を灰皿に落とし、彼は昔話を始めた。
「おまえのおやじの真はこの町で育った。俺の4歳下だったので、あまり話しをした事は無かったが、ただ俺の妹とは仲がよかった」
「恋人同士ですか」
サチは興味津々で訊いた。
「今と違い堂々と付き合うのは難しい時代だし、こんな小さい町だから人の目もあり、現代の若者のようにオープンでは出来なかった。俺は何となく気づいていたけど・・・だからといって妹に聞く事は無かったな」
おやじにもそういう時代が有ったのはわかるけど、おやじが恋愛している姿を想像することが僕には出来なかった。
 沸騰したお湯がサイフォンのロ−トを上昇していた。こんな道具を作った昔の人は凄いと思った。


           遠野物語 21  心のアルバム

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             次回 第49話につづく・・・





   








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