遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第54話 生きる法則

<<   作成日時 : 2008/02/13 21:14   >>

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 いつもの僕の部屋にいる時と同じように、久しぶりに二人の間に笑いがあった。この町に来てから、お互いの思いが違う為に、気持ちがすれ違っていた。
「明日帰るよね」
僕はただ確かめる為に、彼女に訊ねてみた。もしかすると気持ちの何処かに、もう数日いてもいいと思っていたかも知れない。
「うん・・でも遠野物語の曲 聴けなかったね、どんな内容か知りたかったな」
それが彼女の一番の目的だった事もあり、明日この町を旅立つ心残りが、言葉に現れていた。
「マスターが明日もう一度来いと言っていたけど、何の用事かな・・何か美味しい物ご馳走してくれたりして」
「そんなわけないでしょ、ただ私達にもう一度会っておきたいのかもね」
僕も彼女と同じ考えを抱いていた。出来るならもう少しおやじの事を知りたかった。
「俺もう部屋に戻るよ、それじゃあまた明日」
「おやすみ」
僕はすっと立ち上がり、サチの部屋を後にした。
今晩が最後なのかと、僕は廊下を歩きながら思っていた。何か刺激があるわけども無く、特別見るものがあるわけでもなく、物足りなさを感じさせる町だけど、明日東京に帰ると思うと、やはり寂しい気がしている自分がいた。
 一晩だけお世話になる、表札の無い部屋の扉を開け、何の違和感も無く中に入った。サチの部屋と同じ広さで、あまり使用されていない雰囲気は感じられたが、普通に寝泊まり出来る様子だった。
「な〜んだ チャンとした部屋が有るなら、最初からここにして欲しかったな」
僕の荷物もそろえて置いて有り、数日しかこの旅館にいなかったけど、何か寂しくもあり離れがたくも感じていた。隅に寄せてあった布団に横になり、薄汚れた天井を見ていたら、いろんな事が頭を過ぎった。この数日の間遠野の街にいて、何故か僕自身が僕でないような感じがする。うまく表現が出来ないけれど、生きている事が自然に感じている。都会で生まれ育ち、今まで当たり前の生活をして来て、いきなりこんなスローな空間に放りだされてしまうと、今まで自分の抱いていた人生観が狂わされてしまう。何故無理をして、自分の持っている以上の力を出して、世の間に立ち向かわなければいけないのか。生きて行く事を怠けたら、すぐに取り残されてしまう。でも何故そこまでして生きて行かなければならないのか?それが都会の生きる法則なら、人間らしく生きる事が、この小さな町の法則なのではないのか?
 以前 僕の同級生で、自ら命を絶った奴がいて、僕はそいつの事を弱者とか愚か者と思っていた。命を絶つ勇気が有るのなら、何でも出来るのではないのか?でも今思う事は、都会の法則に合わせた為に、自分の行き場を失い、あいつは最後の逃げ場として、自分の命を絶つというただ一つの道を選んでしまった。あいつが身を投げようとしている場に  もし僕がいたら、人生は一方向ではない言って腕を掴むだろう。はみ出そうが、失敗しようが、負け犬だろうが、気持ち一つで次の道が開けると思った。でもいま僕が思っている事は、単なる奇麗事でしかないのか?
 喫茶店のマスターが言っていたけれど、若者はみんな都会に憧れ、希望を持って都会に出て行くと。おやじも都会に希望を持って、この街を出て行ったのだろうか?都会に生きる自分のような奴と、都会に希望を抱いて出て来る奴とでは、人生を生き抜くエネルギーが違うのかも知れない?でも現実はどうだろう。知らず知らずに都会の色に染まり、いつかはその気持ちも薄れてしまうのではないか?もしそうなら、おやじもそうだったかも知れない。自分でも不思議に感じるけれど、改めておやじの生き方を想像している僕がいた。
 目を閉じて、そんな事が頭を巡っているうちに、いつの間にか僕は眠ってしまっていた。


                 おしらせ 

             次回 第55話につづく・・・



 

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