遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第56話 夢の中の若き日のおやじ

<<   作成日時 : 2008/02/20 21:58   >>

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 僕は何とも言えない意識の中で、数人の話し声に誘われるように、目の前が明るくなった。するとそこはトイレの中で、三人の男子生徒が藤井を取り囲んでいる様子が見えた。それはまさしくイジメの現場のようにも思える。いくら田舎ののどかな高校とは言っても、強者と弱者は存在する以上、これは仕方ない事だろう。
「藤井君〜わざわざこんな田舎の学校に来てくれて、俺ら歓迎するよ・・・何で今頃 編入して来たのかな?悪い事するツラではないし、さてはいじめられていた方かな?東京育ちのお坊ちゃま君には、肥やしくさい学校は似合わないんじゃないのかな?」
「いいえ僕は肥やしくさいのは平気です」
少しおびえて素直に答えてしまった藤井は、余計に三人の反感をかうことになる。
「こいつ肥やしくさいのは平気って言ったぜ」
三人は嫌な笑みを浮かべながら、お互いの顔を見合わせて、何かたくらんでいる様子だった。
「それじゃぁよ〜俺ら三人がこの町を案内してあげよう」
「いいえ そんなの申し訳ないから・・・」
「大丈夫だよ遠慮するなよ」
藤井は丁重に断っていたが、そんな事は聞くはずもなく、三人は楽しんでいた。
 僕はすぐにでも止めに入りたい気持ちで溢れていたけど、今僕自身がどういう状況で、ここに居るのか判っていないため、どうすることも出来なかった。
「藤井 声を出して誰か助けを呼べ」
僕は願いだけでも届くように、藤井目掛けて叫んだ。すると藤井とワル三人がトイレから出ようとした時、ひとり同じクラスの生徒が入って来た。ワル三人がその生徒と目が合った瞬間、一瞬空気が変わったように感じた。その生徒は四人の間に通りぬけ、何も言わず小便器の前に立って、お決まりの用をたし始めた。三人は藤井の腕を掴み、いそいそと出ようとした。すると用をたしていたその生徒が、ボソッと言ったのだ。
「おい手を洗ったか」
その言葉を無視し、三人の先頭の奴がトイレの扉を開けた。するとまたその生徒が、とんでもない事を言った。
「なんだおまえら四人そろって連れションか、随分と仲がいいな」
その言葉に三人は反応し、開けたトイレの扉を閉めた。堂々と用足しが終わったその生徒は、彼らを挑発するような事を言った。
「それともタマの見せあいっこでもしていたのか、東京の高校生は経験が早いから立派らしいぞ、おまえらみたいな皮かぶりじゃ勝負にならないだろうなけど」
この生徒の発言には、僕もワル三人も度肝を抜いた。すると三人の中の一人が頭に来たらしく、その生徒に向かい言い返した。
「おい新田なんか俺らに文句あんのか」
その名前を耳にした瞬間、僕のハッとし 頭の中の回線が反応した。この生徒が新田だとすると、もしかすると高校生のおやじなのか?僕はその新田という生徒をジーと見ていた。その高校生のおやじは、ワル三人から目を逸らす事無く、薄ら笑みを浮かべていた。
「いや おまえらには文句はないが、その都会育ちのお坊ちゃんに用があるだけだ」
僕はこの緊迫した雰囲気に、何か始まるのではないかと、ハラハラしていた。
「今からこいつに、この町を案内しようと思っているから、俺達の邪魔をするな」
「おまえらと一緒だと、東京育ちに田舎モンがうつるぞ」
高校生のおやじの言い方に、凄みを感じていた。すると言い合いをしていた一人が、おやじの胸倉を掴んで、今にも殴り合いの喧嘩になりそうな雰囲気だった。
「新田 いい加減にしろよ」
「おやじ止めろよ、そいつらを挑発してどうするんだよ」
僕はおやじの殴られるところを見たくなかった。しかし僕の思いに反して、意外な展開になった。
「おい新田は止めておけ、アイツの彼女の兄貴ってあの伝説の・・」
胸倉を掴んだ一人を、他の二人が両腕を掴んで止めに入ったのだ。おやじは余裕な表情を変える事無く言った。
「それでは藤井を借りていくぞ、ただしこれから藤井は俺の友達だからヨロシクな」
と言うと、おやじは藤井の手を引き、トイレを出て行った。高校生のおやじは、決して悪ぶっているわけでもなく、何か強固な圧力で三人を黙らせてしまった。
 トイレからおやじが居なくなると、その場面がぼやけ始めた。
「待てよこれは夢だよな」
と意識した瞬間、ハッと思って目を開けた途端、天井の蛍光灯の光が眩しかった。
 僕はしばらく頭の中が整理つかず、嫌な汗をかき疲労感が漂っていた。今一人部屋の中に居ると言うことは、さっきの事は夢と理解できた。しかし夢に出て来たあの新田という奴の事が、リアルに頭の中に残っていた。 


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            次回 第57話につづく・・・



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