遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第59話  白いゆりの花

<<   作成日時 : 2008/03/01 01:04   >>

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 旅館の朝ごはんをゆっくり済ませ、僕とサチは各々の部屋に戻り、出かける仕度をする事にした。部屋に戻ると、すでに布団は片付けられており、全開になった窓からは、朝の爽やかな空気が出入りしていた。小さな床の間に置いてある花瓶に、白いゆりの花が生けてあった。
 特別準備を必要としない僕は、Tシャツ一枚着替え部屋を出た。そして旅館の玄関で、サチが降りて来るのを、一足先に待っていた。やはり女性は時間がかかるらしく、なかなか来てはくれない。そんな待ちぼうけの僕に、通りがかりの旅館の女将さんが、僕の顔をみるなり声を掛けて来た。
「昨日の夜は良く寝むれましたか?」
「ええ まあ・・」
良く寝たのは事実だけれど、起きた時のなんとも言えない不快感が、笑顔で答える事を拒んだ。
「大丈夫でしたか?」
僕が言葉を濁したような言い方をしたので、女将さんは僕を覗き込むように聞き返した。でもその質問の聞き方に、どういう意味があるのか、すこし気になった。
「大丈夫って何がですか?」
「いえ、なにも無ければいいです・・・それでは気をつけて行ってきてください」
そう言って女将さんは奥に引っ込んでいった。僕はただ部屋の広さを気にかけてくれたのかと、その時はそれ程気にしなかった。
「お待たせ、さあ行こうか」
そしてタイミングよく、サチが降りて来た。
「女将さんと何話していたの」
「ただ、お部屋大丈夫でしたか・・・って」
特に内容のない話に、彼女は軽く耳を傾けるだけだった。
 外は今日もいい天気で、すぐに汗ばんで来そうだった。そんな晴天の下を、徒歩でマスターの待つ喫茶店まで行く事にした。もうこの町も随分と把握できたので、最後の日は澄んだ空気を嗅ぎながら、のんびりとこの町を歩いて見たかったのだ。
 城下町であるこの町は、小さいながら碁盤の目になっている。小さなお店やさんが立ち並んでいるけど、あまり人が居なくて、何処となく活気がない。昔は繁盛していたような店が、現在は閉まっている。やはりこれが現実なんだと、感じさせられる。
「そういえば、サチの部屋には何の花が飾ってあった」
僕の歩きながら、部屋にあった白いゆりの花を思い出したので、チョッとした暇つぶしに聞いてみた。
「花・・?そんなの無かったけど」
「僕の部屋には、白いゆりの花が生けてあったよ」
「白いゆりね・・・清らかで汚れなき・魅惑なひとときか」
「なにそれ」
僕は真顔で彼女に聞き返した。
「花言葉・・まあタクには似合わないね」
確かに僕には縁のない物だった。
 でも何故僕の部屋だけに、生けてあったのだろう。旅館に戻ったら女将さんに聞いて見ようと思った。


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             次回 第60話につづく・・・


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