遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第60話  ブラックコ−ヒ−

<<   作成日時 : 2008/03/05 02:56   >>

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 20分くらい歩くと、マスターが待つ喫茶飛行船に着いた。まだ昼前なので、店の表には準備中の看板が出ていた。
「あれ まだ店開いていないよ、マスターまだ起きていないのかな?」
「そんなことないよ、だって昨日この時間に来てくれと言っていたのに」
僕らは一度 店の前で立ち止まり、どうしようか迷っていた。するとサチが躊躇(ちゅうちょ)することなく、そっと店のドアを引いた。そのドアは鍵がかかっていなく、カウベルが静かに音をたてた。
「お−いらっしゃい 待っていたよ」
店のカウンターに居た、マスターの元気な声がした。
「おはようございます、でもまだ準備中ですよね」
「準備中にしているのは、君達以外のお客さんが入って来ないようにだよ」
僕らにはマスタ−が言っている意味が理解できなかった。すかさずサチがその理由を聞いてみた。
「それどういう意味ですか」
「まあ簡単に言えば 貸しきりみたいなものかな」
とマスターはニコニコと照れながら答えたが、貸しきりにしなくても、お客さんが来ないのではと、失礼ながら僕は思った。
 昨日会った時の、無愛想な顔をしていた人とは思えないほど、今のマスターはいいおじさんの顔をしていた。まったく一晩でこれ程変る人もめずらしい。それに昨日と違い、店の香りが何処となく変った様に感じた。それも手伝ってか、僕ら二人は無駄な緊張感も抜け、リラックスした気持ちで、この空間に溶け込んで行った。そして僕らが来るタイミングに合わせたように、作りたてのいい香りのするコーヒーを出してくれた。
「さあ 飲んでみてくれ」
マスタ−は自信有りげに、僕らにコ−ヒ−を勧めた。確かにこのコ−ヒ−は、昨日同じ場所で飲んだ物と思えないくらい、すばらしい香りがした。それはサチも同じ事を思ったらしく、同じタイミングでお互い顔を見合わせてうなずいた。
「お−・・・」
僕とサチは、このブラックコ−ヒ−を一口飲み、感激をこの一言で表現した。
 そんな和んだ雰囲気の中、マスターが僕らに訊ねてきた。
「もう一度聞くけど、君達は遠野物語の曲を知りたいんだよな」
「あ、はいそうです」
僕とサチは、二人意気が合ったように同時に答えた。
「よし分った、君達の望みを叶えてあげよう」
そしてマスターは話し始めた。
「その遠野物語という曲は、1977年頃 飛行船というフォークグループが唄っていた」
僕ら二人はジッとマスターの顔を見て、興味津々で耳を傾けていた。しかし少しの間の後に、マスタ−のひと言に僕らを驚いた。
「以上だ」
「エ〜ちょっと待ってください、それだけですか」
それは誰もがツッコミたくなる瞬間だった。そんな簡単に終わりにされても、ここまで来た努力が無駄になってしまう。それにこの店を、僕らの為に貸切りにする意味として、あまりにもそのひと言では無意味と思った。
「不満みたいだが、それ以上説明しようがない。妹が好きな曲だったから、よく聴かされていたけど、なんせ遠い昔のことだからな」
 このくらいの情報ならインターネットで調べられるし、もしかすると それ以上の事が知ることが出来るだろう。僕らが望んでいる事は、そんなデジタル的な事ではなく、もっと心に届くアナログ的な物が欲しかった。


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            次回 第61話につづく・・・



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