遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第64話  手紙そしてメロディ

<<   作成日時 : 2008/03/19 03:12   >>

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 サチは僕の代わりに、妹さんの手紙を読み始めた。
「真 元気で暮らしていますか、私は高校卒業に向けて準備しています。
 私は東京の短大に決まり、東京での生活に憧れと不安と希望で、頭の中がどうにかなりそうです。でも真の近くに行けると思うと、そんな事どこかに吹き飛んでしまいます。東京でいろんな事件のニュ−スを目にすると、やはり少し不安になります。真は東京に出て行く時に、私のように不安にならなかった?私と違って真は、自分のやりたい音楽しか目にうつっていなかったものね。『有名になって、いつかお前を迎えに来るから、待っていてくれ』と言ってくれたけど、そんなの待っていられないから、こちらから押しかけます。その為に、頑張って東京の大学に合格しました。そう考えると、学問の神様の力より、愛の力の方が凄いと思っています。まあ親には少し負担をかけてしまうけど、その分 社会に出たら親孝行します。
 一つ提案が有るけど、東京に行って寮に入る事になっていますが、すこしたったら小さい部屋を借りて、二人で一緒に住まない?(やっぱり親不孝かな)お母さんに教えてもらって、少しは料理の腕は上げたつもり・・?最初は失敗しても多めに見てね。そして真が有名なミュージシャンになったら、私が真のマネ−ジャ−になって、コンサートで全国を周ろうね。そうすればいつも一緒にいられるから。そんな事を、一人で想像して盛り上がっている私ですが、後の事は無理でもいつまでの一緒に居たいです。
 正直、真が半年前にこの町を出て行って、それ以来 淋しい気持ちを我慢して来ました。あの夏の日から今まで、一日一日が長く辛い時も有りました。けれど最近では、会える事を考えると、ドキドキして眠れない日もあります。早く明日が過ぎないかなとか、1週間がいっきに過ぎないかなとか、くだらない事を考えたりします。目が覚めると必ず明日が来るのに、そんなにあせらなくても、必ず会える日が来るに決まっているのにね。だから真の分まで、毎日くいのないように、残り少ない高校生活をおくる事にします。
 今晩は雪が深々と降り続いています。今年は雪が多いので、鍋倉公園の桜は、少し遅くなりそうです。そうだ まだ先だけど、東京での最初のデートは、桜の花を一緒に見に行きましょう。
 それでは身体に気をつけて、季節の変わり目なので、風邪をひかないようにね。また手紙を書きます」
 そうしてサチはそっと便せんを閉じた。手紙を読み終えた彼女の表情は、とても悲しそう見えた。そんな彼女の横顔を見ていたら、
「ありがとう」
と僕は、女に心から感謝の言った。彼女は目を閉じて顔を左右に振り、それ以上何も言わなかった。
 マスタ−には、昔の高校生の妹さんが見えていたのだろ。それを思うと僕は、何かグッと込み上げるものが有った。
「それでは最後にもう一度かけるからね」
とマスタ−は、再びレコードに針を落とした。
そして三度目の遠野物語が静かなメロディで流れ始めた。

♪♪ 時刻表の地図を 指でなぞってゆくと 心のアルバムに しまってた懐かしい駅に着く〜 最後の夏だから 思い出だけが欲しかった 人を傷つけても それを思い出にした 遠野の町に白い日記を ボストンバッグに詰めてきた僕に 昔々のおとぎ話で ページを埋めてくれた君〜 ・・・♪ ♪ ♪ ♪ ♪・・・ この町が好きと言った君の目は 子馬のように澄んでいた あの町に帰りたい あの頃をやり直したい 今でも残ってるだろか 古い曲がりやよ あの町に帰りたい あの頃をやり直したい 今でも残ってるだろか 古い曲がりやよ ♪♪

 曲が流れ終わった店の中は、ただ静まりかえり、三人それぞれの思いが、この静けさに込められていた。


                お知らせ 

            次回 第65話につづく・・・


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