遠野物語 21 -若葉の季節-

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zoom RSS 第72話(最終話) そしてまた夏が来る 

<<   作成日時 : 2008/04/16 23:56   >>

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 あれから数年経ち、何とか大学を卒業して、僕は社会の一員として毎日満員電車揺られ、靴をすり減らして戦っている。あの頃はこんな姿のおやじが嫌いだったけれど、いま同じ姿で同じ生活をしている。時々電車の窓に写る自分の姿を見て、何故かコッケイに感じる事もある。
 そして毎年8月15日は父のお墓参りは欠かさない。父のお墓はというと、遠野盆地の花火の見える高台に置いた。初め母親は、あまりのも遠いので反対していたけれど、僕の固い意志に根負けしてしまった。何故ならあの遠野物語に出てくる「あの街に帰りたい」のフレーズのように、父の願いを叶えてあげたかったからだ。
 そしてこの町に来る度、必ず寄る所がある。それは頑固なマスターのいる喫茶 飛行船だ。彼も歳のせいか、少し性格が丸くなったように思えた。
「来年は三人で来る事になるな、おじいちゃんにも抱かせくれよな」
そうです、僕は結婚して数ヶ月後には、父親になります。勿論 結婚相手はサチです。まだ生まれていないのに、そんな事を言っている。それに何であんたがおじいちゃんなのか言い返したいけど、まだ現役の強面には逆らえない。
 あの東京駅で別れてから、いつものような二人の距離間だった。そしてお互い年齢を重ねるごと、時空間が異なる生活をして来た。そんな中でも二人の中には、あの暑い夏の遠野の三日間が、共通の思い出として生きていた。夏になる度、僕もだけれど、サチもあの若き日の事を思い出し、会うたびに話す内容がその事だった。そしてもう一度、一緒にこの町に居る。これも運命と思うと、きっとオヤジが導いてくれたと今は思っている。僕らが変わっても、この町だけはいつまでも変わらず、僕らを受け入れてくれた。
 そして都会の生活に疲れたら、この街に家族で暮らそうと考えている。誤解しないで欲しいけど、決して負けて逃げてくるわけではなく、自分達に合った人生を送る為に。これが親父が僕に残した遺品だったと、今になってやっと気づいた。


                おしらせ 

  今回で最終話を迎える事になりました。ありがとうございました。

  これからもこの 遠野物語21−若葉の季節− を内容を深め、進化させて行きますので、よろしくお願いします。





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